【沖縄・久米島】球美の島
jan.2017
羽田から早朝の直行便で向かった久米島は沖縄本島から西に100kmの島。澄んだ海、青い空……と言いたいところだが、大雨と取材仕事で景色どころではなかった。帰路につく前の時間を使って「畳石」と「宇江城」には行ったが
まぁ、写真を見ていただけばわかるだろう。
Googleにお願いすれば晴天の景色は無数にあるだろうから、南国らしい景色はそちらに譲ることにする。
夕方まで某企業の取材。オーナー夫妻に玄関まで送っていただくと、敷地に見慣れない草が生えていた。「これはなんの葉ですか?」とオーナーに聞くと
「長命草。本土にはないの?」と葉をちぎって、パッと手渡される。
う、苦い……
周りはみんな笑っている。
長命草の名のとおり、食べてよし、肌に塗ってよしの万能草は、昔から八重山をはじめ南の島で愛されてきたのだという
「ヌチグスイだよ、薬だよクスリ。身体にいいよー」
そのクライアントが手配してくれた宿に宿泊し、夜は近くの居酒屋に向かった。これがなかなか良い店で、車海老の養殖が日本一なこともあって、東京と比べて安価だし、そして何より新鮮。地元の人も訪れて結構呑んでいるのが素敵だった。
かつて琉球列島の中で最も美しい島と讃えられた「球美(くみ)の島」久米島だが、くみは米を意味し、米の島を意味するという。なるほど泡盛の久米仙で有名なくらいだからな、美味いこと言うなぁと感化されてついつい久米仙を注文 (注:琉球泡盛の原料はタイ米、笑)。
その昔はアジアの中継貿易でにぎわう寄港地だったというが残念ながら今はもうその面影はない。真冬で悪天候だったせいもあるのかもしれないが……
取材した企業のオーナーに久米島のことを伺ったら、リゾートというキーワードとは別に新しい働き口を増やさなければ帰島したい人が戻れないし、減り続けている人口に歯止めが利かないと話していた。離島促進事業も盛んで民泊の受け入れも積極的な島なので興味のある方はぜひ調べて欲しい。
沖縄本島より素朴な、いや、やんばるの人々と気質が近いな、などとセガミと話しながら空港へのハンドルを握る。短い旅だったけど、何が気になった?と聞くと
「長命草ですかねぇ」
それより、ちぎって食べさせてくれたその人柄に、はるばる来てよかったな、と話して後にした久米島だった。
[写真・文:前田義生]