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【大東諸島】旅するウフアガリの島

aug.2019

またまた1年以上ぶりのjourneyである。最近はインスタグラムというSNSがあるのでついそちらに情報を載せてしまっている。スマートフォンからそのまま写真もアップし、ついでにハッシュタグを付ければ、あら便利。とにかくイージーこの上ないのだが、アナログな印刷物をつくる人間としては質感のないデジタル表現に毒されている悪い見本みたいなもので、その便利さにすっかりハマっていることに幾分の後ろめたさが残る。

そういえば世を風靡したフェイスブックの利用者は減少し、逆に速報性の高いツイッターが増加傾向なのだそうだが、テレビでも「素人が撮影した衝撃ツイート動画」をニュースとして堂々と流しているし、ここ数年は恐ろしいほどにスピード感のある情報伝達が求められていて「遅い情報=価値がない」といった風潮は年々加速するばかりだ。

ほら、今やハイブリッド&自動ブレーキの付いていないマイカー購入を亭主が検討すれば、「え、なんで?」と奥方から睨まれかねないのと同じで、少なくとも22年落ちのマニュアル車を所有するレトロな自分にとってこの最新感を吸収するのは実を言うと精神的にシンドイ。とはいえ何事も勉強と思ってイジっているのがインスタグラムやツイッターなのだ。このブログだって10年前までは最先端のデジタルメディアだったはずが、今やもう既にレトロな媒体と化していないだろうか?

そんな自分のアンビバレントな心情を語っても仕方がないが、激流の情報に揉まれ続けることは誰でも疲れるはず。だからわざわざJR武蔵小金井駅から徒歩15分のアムコまで、古道具と作家の手仕事品をのんびりと見に来る人がいるのだ(と信じたい)。

さてこの夏、そんな情報の激流を外から眺めるような錯覚に陥った場所を訪れた。

沖縄県、大東諸島。北大東島と南大東島、そして無人島の沖大東島からなる絶海の孤島。小笠原の父島・母島と違って飛行機でも行けるから便利なのだが、那覇から硫黄島方向に340キロ以上離れた場所にある島だから近いはずはない。風景は八重山の小浜島と近い感じで山のない真っ平らな表情だったが、ここはサトウキビ栽培をするために100年ほど前に開拓された島で、八重山のように観光業が成立しておらずツーリストは殆ど訪れないという。滞在中、南と北の各島では自転車を借りて走り回ったのだが、それぞれ島の中心部には児童用の学習信号機が1箇所ずつあり、近くに商店があるという構成だ。そこへ向かう道すがら出会うクルマの多くは老人が運転する軽トラだったが、なぜか若い人を殆ど見かけることがなかったので尋ねると、中学を卒業したら進学のために島を出てしまうからだと島の人は語った。

ここでは「高齢者は免許返納しろ」とか「老害が」などと言う人はいないんだろうな、きっと。

南大東島にはかつて島内を縦横無尽に走ったシュガートレインの痕跡が残り、北大東島は中央の窪地を囲むように長幕(ナガハグ)と呼ばれる崖壁が続くが、やはり島のほとんどがサトウキビ畑で埋め尽くされていた。何れにせよ便利な東京に住んでいると戸惑うくらい商店がなく、遊びを自分で作れない人はきっと退屈で死んでしまうだろうなと思ったほどである。

ある夜、漆黒の闇に包まれたサトウキビ畑の上には、昔学校で習った星座たちがプラネタリウムのごとく輝き、スマホをかざすことも忘れている自分がいた。

遥か4800万年前にニューギニア付近で生まれ、今も琉球海溝へ向けて年に数センチ移動しているという「ウフアガリ(琉球語で東の涯ての意味)」の島。沖縄であって沖縄でない独自の文化を乗せてこの島々は旅を続けているのだ。大東島で感じた日々の断片を、自分の記憶が消えてしまう前に印刷物へ記録していこうと思う。

[写真・文:前田義生]

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