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【長野】木曽平沢の漆集落

nov.2016


初冬のある日、旧中山道は奈良井宿近くにある、木曽平沢へクルマを走らせた。漆器好きの方なら聞いたことがあるであろう「木曽漆器」の生産地への取材である。

木曽にある良質な木材を加工してつくりだした木製品を、さらに丈夫にするために漆塗りしたことから始まったと言われている。古くから山深い漆器町として栄えたこの集落だが、現在も漆器職人が大勢住む町並みは「重要伝統的建造物群保存地区」として国に選定され、歴史的価値が非常に高い場所でもある。

 

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諏訪湖で昼食を済ませてから、塩尻を抜けて木曽平沢に向かったのだが、ナビが教えるショートカットルートの林道をゆくと突如動物が現れた。野生のカモシカ??脚、太くない?いわゆる「カモシカのような脚」とは、細くて長いはずでは……。

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気を取り直して運転を再開、到着した木曽平沢の印象は「漆屋さんだらけ」だが人影は伺えない。いわゆる観光地にはない素朴な空気が流れる。

かつて、江戸中期に中山道を往来する旅人を相手に曲物などの日常雑器をつくったことから有名になった地域だが、時代の変遷とともに全国の伝統工芸の産地がそうであるように、ここでも座卓などの大型家具で潤った時代を経て昔ながらの工芸品は衰退の一途を辿る傾向にあったそうだ。

しかし取材で訪れた工房では漆職人の師匠である父の技術的な教えをヒントに、まったく新たなアイテムをその息子が生みだしていた。いままでなら想像もできなかったであろう漆の作品は、まさに目から鱗だった。

「漆は、漆だけにとどまらないんだな」

漆の次なる可能性をこの静かな集落のなかで目にした瞬間、この旅の喜びを感じることができた2人でした。

[文:瀬上昌子/写真:前田義生]

 

 

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